社員コラム第2回: 2012年、マーケットが変わるとき我々はどうするか
昨今の市場取引のスキームに変化の兆し、新たな概念に触れる機会が増えてきている。
ひとつは、CVAに代表される取引先(カウンターパーティ)に対する信用リスクを考慮した評価、管理というもの。またもうひとつにはCCP(集中清算機関)によるデリバティブ取引の集中化がある。これらから派生する、ディスカウント方法の変更(LiborディスカウントからOISディスカウントへ)や、適格担保の取り扱い変更(取引通貨ベースの現金担保への移行)、ISDA CSAのレギュレーション改正(Standard CSA)等々である。これらに共通して言えるのは、諸所の取組み、方法論等は既に欧米を中心としたグローバルマーケットでは適用済み、もしくは着々と準備をしているものでありながら、かたや我が国においては、その概念の共有が未整備であることや、そもそも国内の市場慣行にマッチしないのではという意味でその対応を敬遠している向きもあると言うことである。
ひとつずつ見ていくが、まずCVAについてはいわゆるインベストメントバンクを代表とする、市場間取引が主戦場となる欧米の主要金融機関に対して、国内の金融機関のほとんどはコマーシャルバンクを生業としているために、カウンターパーティ(ここでは事業会社を中心とする対顧客取引)にCVAチャージを行うことを中心とした業務への実装には、取引先の理解を得られない等の理由で“実務に反映するのは”消極的とする向きがある。
またCCPに関しては、欧州のLCH、米国のICE Trust等、着実にOTCデリバティブ取引をCCPへ移管する方向で動いている中、日本のJSCCにおけるディスカウント方法としてのOISディスカウンティング方式を対顧客取引に適用することは、上記のCVAに同様、評価カーブが変わったことによりプライスが変動することを取引先にご理解頂く困難さを問題視する向きが強い。適格担保についても、欧米では現金による担保取引が一般化しているのに対し、国内では国債、社債、一部では仕組み債も担保対象とする商習慣が今も大勢を占めており、これまで使っていた国債が担保として使えなくなることに関しては、市場関係者も戦々恐々としているという。
ここで感じるのは、これまでの取引慣行や、国内の常識と今日のグローバルベースでの市場慣行とのギャップがいよいよ無視できない領域まで達しているということである。とはいえ、海外がそうだから国内もすべてそれに倣おう、ということが易々とできるとは思わないし、それがBestな選択とも思えない。
こと国内の銀行に関しては、市場取引を従来の融資業務と平仄を合わせた形で変更していくことが大前提なのは言うまでも無いことであるので、国内慣行に併せつつ、グローバルベースにも対応できる落としどころを市場の有識者が様々な意見交換の中から模索するしか、今のところ無いと思うのである。
しかし、今日の日本経済の停滞感の中、グローバルな流れに経済界全体がひとつの答えを見出していこうとしているが、さらにIFRS等の会計基準の変更も多分に影響することを想定すると、金融機関の取引先であるこのような一般事業会社自体が、先に“世界標準”に精力的にキャッチアップしていくこともあるのではないのだろうか。
そうなると、外資系の提示するプライスと本邦金融機関が提示するプライスの“ズレ”というものに対し、むしろ取引先からの要請により国内金融機関にグローバル化を迫られる動きもあるのではないか、と思うのである。
私見であるが、IFRS13号「公正価値測定」において信用リスク調整後の公正価値の適用を求めていることからも、グローバルで海外とガチンコな競争を強いられている有力企業は既にこの時代の趨勢に意識を持って取組んで行くだろう。これを機により金融界も連携をとって、より国際標準的な仕組み作りに取組む動きになれば、と思うのである。
小職が多く接する地方の金融機関の皆様からも、地場の取引先の多くが海外でのビジネスに今後の企業としての生き残りをかけて必死で取り組んでいると聞く。金融市場系ITソリューションを生業とする当社も、現在上記のテーマについては積極的に取り組んでおり、社外有識者との連携を進めながら自社ソリューションを通じて金融機関の皆様に提案している。同時にこれらのマクロな動きを意識して海外動向を睨みつつ、積極的に良いものを取り込んでいく次第である。
株式会社ティージーアイ・フィナンシャル・ソリューションズ
ITソリューション事業部
コンサルティングセールスグループ
赤廣健児









